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二日目(日)の午前中に友人たちが帰った後、彼は自分の大学の学園祭に赴いた。ぶらぶらと一通り模擬店の間を歩き、アップルティー味のわたあめをひとつ買った。わたあめはめんまるさんの好物である。味がついていて安ければなお良い。

学園祭から早々に引き上げてきた彼は、夕方に備えて布団でぐっすり眠った。


夕方、彼は高校のときの友人たちと会うために四条へ向かい、18時30分に阪急百貨店前で集合した。
ところが、こともあろうに友人の一人が寝坊をして一時間以上到着が遅れるということが判明し、彼らは時間をもてあました。


手持ちぶさたになった彼らは四条界隈をうろうろし、鴨川沿いを歩き、河原町のゲームセンターなどで暇を潰した。
友人の一人はドラゴンボールの悟空のフィギュアに2000円も注ぎ込んでいたが、彼は弱者が強きものに搾取される、その仕組みをそこに見た気がしてぷるぷる震えた。


遅刻していた友人が到着すると、ようやく彼らは木屋町にある焼肉屋へ向かった。
焼肉屋では肉とごはんとデザートを死ぬほど食べ、四人とも違う意味で一触即発の雰囲気に到達した。
そんな、きっかけ次第でいつでもREVERSEできるような状態の四人組は、細い路地を抜けて河原町を北上し、地下鉄で北山にある四人の中の一人の部屋に向かった。


その部屋で彼らは、烏龍茶をちびちびと飲みながらゲームをしたり風呂に入ったりと驚くほどに健全に過ごした。

少なくとも、テレビを見るまでは。
この日はF1のブラジルグランプリがあったのだ。
今年の最終レースで、しかも優勝が決まる大一番。
ラスト一周、最後のコーナーでグロックがハミルトンに抜かれた瞬間には、その時点ではマッサの総合優勝を確信していた四人全員が口々にわけのわからぬ叫びを上げ、のたうちまわった。
さぞかし近隣の人々は迷惑だったことだろう。


F1が終わると部屋にはやるせなさとけだるさが立ち込め、彼らはごろりごろりと転がって寝る体勢に入った。

しかし、そこから高校時代の思い出タイムが始まる。
彼らはいつも同じ話をしている気がするが、やたらと盛り上がる。
二時間ほどたってその思い出話も一段落すると、ひとり、またひとりと眠りに落ちて行く。
しかしその中で、彼と一人の友人は消えそうで消えないろうそくの火のように細々とくだらぬ会話を続け、サクサクのパイ生地のごとく薄っぺらい内容を重ねて日の出を迎えた。
結局彼らが眠りに就いたのは、日がかなり高くなってからであった。