サーフ ブンガク カマクラ

京都に戻ってきた彼は、早速大学生協アジカンのニューアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』を購入した。
彼はそれを鞄に潜ませてゼミの大会に向けて仲間と話し合ったあと、そわそわしながら家に帰る。


浮き足だって家に帰ったにもかかわらず、彼はしばらくCDを聴かずに温存した。
この「早く聴きたいけどまだもう少し我慢して自分を焦らす」という、ジレンマの中で繰り広げられる自分との駆け引きが、その後の楽しみを倍増させてくれるのだ。


そして“そわそわ”も最高潮になった頃、彼はCDをパソコンに入れ、藤沢から一気に終点まで走り抜けた。
途中
『腰越クライベイビー』では『君繋ぎ〜』を思わせる歌詞とゴッチの裏声に腰上まで浸かり、
七里ヶ浜スカイウォーク』では六波羅蜜寺の清盛像を思い出し、
稲村ヶ崎ジェーン』ではやまだかつてないほどのポップさとともにビートルズを感じ、
極楽寺ハートブレイク』ではそれまでのアジカン“らしさ”を感じながら行ったことのない極楽寺周辺の初夏をまぶたに描き、
『長谷サンズ』では語呂合わせににやにやしながら意味もなく鎌倉に馳せ参じた気分に浸った。
最後の曲、『鎌倉グッドバイ』を聞き終えた彼は小さく「こりゃあ反則や…反則やでぇ…」とつぶやき、再びロックでポップな波の間に消えていった。

サーフ ブンガク カマクラ

サーフ ブンガク カマクラ