書を抱えて山を見る

大学生活最後の年の、前期テストが全て終わった。
明け切らない梅雨の、何とも言えない湿度と熱気にくるまれて、彼は大学から帰れないでいた。


それは、"やらなければならないこと"であり、"早くやり始めたいこと"であり、それでいて"億劫なこと"でもある。
さらに早く終わってほしくもあり、永遠に終わらないでほしいことでもある。






卒業論文







大学生活の集大成にして最も面倒くさい課題でもある。
早く終わらせたいと思うが、終わった頃にはすでに"卒業"が目の前に迫っている切なさ余って億劫さ100倍の憎いヤツなのである。




彼は図書館で、卒業論文の参考になりそうな何冊かの本を借りた。





ラテンアメリカ多国籍企業論―変革と脱民族化の試練

ラテンアメリカ多国籍企業論―変革と脱民族化の試練

ラテンアメリカ (地域研究シリーズ)

ラテンアメリカ (地域研究シリーズ)

現代キューバ経済史―90年代経済改革の光と影

現代キューバ経済史―90年代経済改革の光と影

絵のなかの散歩 (新潮文庫)

絵のなかの散歩 (新潮文庫)



この他に国士舘大学関西大学の論文集からメキシコの"マキラドーラ"に関する論文をコピーしていたので、合わせるとかなりの量になるはずだ。
ただでさえ本を読むのが遅い彼に、一夏でこの量がさばけないであろうことは想像に易いが、彼はこの他にも未読の本を多く抱えている。



例えば今日借りた洲之内氏の本なども、卒論とは関係なく「ただ読みたかったから」借りただけである。




さらに、最近彼はヘミングウェイの『老人と海』をいまさら衝動買いしていた。
その上、先日の誕生日に友人から贈られた、森見氏の『恋文の技術』もある。
あまつさえ、彼は夏休みにいろいろと国内に遠出する計画を立てているのだ。
もはや、いろいろな物が絡まり合って前が見えない。



大学生活最後を飾る彼の夏は、どのようなものになるのだろうか。




老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)