ひこにゃん城
清々しい秋晴れの日曜日。
彼はめんまるさんとHARIBOのくまを引き連れ、彦根城を訪れた。
本当に彦根は“ひこにゃん”一色である。
彦根駅から彦根城までの間にも旗や石像や菊人形など、至る所に出現するひこにゃんに、めんまるさんは心躍らせていた。
12時半頃天守閣前の広場に着いた彼らは、まず持ってきたおにぎりで腹ごしらえをし、13時半に登場するひこにゃんを待った。
13:30、ひこにゃん登場。
ひこにゃんは、大勢の人が見守る天守前広場でしばらく“放し飼い”され、人々は興奮しながらその姿を各々のカメラにおさめた。
彼やめんまるさんも例外ではない。
その時の感動を、めんまるさんはこう振り返る。
本当は、 あのまふまふとした 真っ黒な 手をとって
『はじめまして‥(*´・∀・`*)』と ご挨拶したかったのですが、
案内係のおにいさん曰く、
よいにゃんこは 触られるとえらいことになる ということでしたので
泣く泣く がまんしました。
水で描かれた にわかステージの中で 放し飼いにされたよいにゃんこは、
すずを ころころ鳴らしたり
小道具を持ち出してきて 芸をしてみせたり
観客からお土産を貰っては 恭しくおじぎしてみたりと
それは それは、 たいそうかわいらしくしておりました。
あんなに かわいらしいにゃんこが、
じつは 城持ち なのだというから おったまげます。
ひこにゃんの登場によりほったらかしにされたくまはふてくされてひとりで天守閣に登ったが、やまだかつて経験したことのない、なんと63°という急勾配の階段に辟易した。
天守閣の3階からは琵琶湖が霞んで見えた。
天守閣をあとにした彼らは玄宮園を訪れ、日本庭園の美しさに囲まれながらまどろんだ。
彼らが思い思いにひこにゃんのポーズをとって写真を撮っているのを尻目に城のお堀では黒鳥が鳴き、お堀沿いには二期咲き桜が見事に咲いていた。
ふと気付けばお堀周りの木々も色づき初め、水に映る紅葉を沢山の人が撮影していた。
そんな中、“かわいい犬を連れたおじさんの後ろ姿がさらにかわいい”という、珍らかな場面に遭遇することもできた。