とげまる


彼は、スピッツの新しいアルバム『とげまる』を買った。

アジカンフジファブリックなど邦楽ロックが好きな彼であったが、スピッツのアルバムを買うのは今回が初めてである。

シングルに関しては高校時代に2枚ほど買ったことがあり、テレビやラジオで流れる曲を「いいなぁ」と思って聴いてはいたのだが、それ以上の、アルバムを買ったり借りて聴くような情熱は持っていなかった。


そんな彼がなぜ、このタイミングでスピッツのアルバムを買ったのか。


それは、この上なく「なんとなく」が重なったことに起因する。


そもそも、昨年のNANO-MUGEN FES.2009でスピッツのライブを観たことで、彼の中のスピッツ熱はぷつぷつと熱され始めてはいたのだ。

そこへ重なる、「なんとなく」。

・なんとなく、『とげまる』という名前が良い!

・なんとなく、アルバムジャケットが好き。

・なんとなく耳にした『シロクマ』が気に入った。

・なんとなく目に入った『MUSICA』で、アジカン後藤氏と対談していた。

・そしてなんとなくスピッツが好き。


そんな「なんとなく」の相乗効果でふらっと買った『とげまる』を、彼は今「なんとなく」ではなく確固たる自信を持って、絶賛している。


一聴しただけで心をつかむメロディ。


何度も味わいたい深みのある歌詞。


そして溢れんばかりのキラキラ感。
「草野氏こそ、日本のPaul McCartneyかもなぁ…」と、これは「なんとなく」思った彼。


アルバムの全14曲中、実に7曲が映画やCMとタイアップしていて聞き覚えがある上に名曲であるばかりか、それ以外の曲の持つ独特の雰囲気が、このアルバムを『とげまる』たらしめていて良い。


中でも彼が最も感動したのが、♯4『恋する凡人』という曲である。

こんなにひねくれているのに、こんなにストレートでキラキラした曲にはそうそうお目にかかれない。

それでいて特筆すべきは、その曲の終わり方である。

疾走感溢れるサビの最後に、「これ以上は歌詞にできない」という、衝動が暴走して表現を丸投げしたかのような巧妙な表現


もはや、「勝手すぎてステキ…」の境地である。


そんな境地が今までどこに存在していたのかは定かではないが、とにもかくにも『とげまる』で、素晴らしい。

とげまる

とげまる