2010-01-01から1年間の記事一覧

マジックディスク

なんだか、朝から理不尽な日であった。どうしてこんな思いをして、我慢をして、働いているのか。 働かなければならないのか。 ちょっとよく分からなくなった。 郵便を取りに行って、空を見上げる。 世界は動いている。 彼は大きく息を吸って、吸って、はいた…

すがすが

彼は、清々しい顔で家路を急いだ。 月曜火曜にあった一泊二日の研修明けで支店に戻るのが憂鬱な彼であったが、今日は一味違った。 朝からとても忙しく、気がつけば閉店時間。 忙しいと言っても“できる仕事”なので順序だてて着実にできる、精神衛生上健全な忙…

雨の都

ぱぶりっく京都

この土日、彼はめんまるさんと京都へ行った。大学時代から通っている、歯医者に行かなければならなかったのである。しかし欺されてはいけない。 歯医者に行くというのは単なるカムフラージュで、彼の真の目的は京都で遊ぶことにある。別に誰に隠す必要もない…

copa del mundo

ここのところ寝不足が続いている彼は、仕事中に頭がぼんやりして非常にまずい状況になりがちである。 それもこれもワールドカップのせいである。毎晩普段より遅くまでワールドカップに熱中しているため、朝から頭が重いのだ。 しかし、一昨日、日本がカメル…

novios

向こうのほうで高校生の男女がベンチに座り、淡い青春に爽やかな花を咲かせている。 駅前の地下広場。 その端の、人目のつきにくいところでありながら彼のちょうど対角線上で高校生たちは青春を謳歌している。 仲良く話し、手を取り合い、大変楽しそうである…

休日らしい休日

今日の彼は、これでもかというくらい、休日らしい休日を過ごした。 午前中を優雅に布団の中で過ごした彼は、昼過ぎに公園へと向かった。 そこで待ち合わせていた友人と、キャッチボールをする。 彼が誰かとキャッチボールをするなど、高校時代に弱小軟式野球…

彼が朝起きると、寝るときに着ていたはずの服が半分脱げていた。 詳しく言うと、左右の袖に腕は通したまま、裾はめくれ上がって首の後ろにあり、お腹が完全に出ているような形で、前から見ると両肩から下だけ服があるという状態である。 意味がわからない。 …

どうせなら

天気もよく暖かい日曜日の昼下がり。いつもなら目を尖らせて原付きをぶっ飛ばしている彼でも、こんな日は五月の陽射しを浴びつつ、鼻唄まじりにのんびりと走りたくもなる。 そんな穏やかな心持ちで駅前から続く道路を南へ向かっていた矢先である。 彼の前を…

邂逅に次ぐ邂逅

彼は今日、約三ヶ月ぶりの献血を終えてから、高校時代の友人と会った。 彼女と会うのも三月以来である。 彼らはカフェで昼ごはんを食べながら近況を報告し合い、就職してからの苦労話などを話し合あった。 そしてカフェを変え、映画や政治などの話題も織り交…

musica崩壊

彼は大いに憤っている。それは、サカナクションのライブの影響によるふくらはぎの痛みが、昨日より一層強くなっているからだけではない。 彼が憤っているのは、彼が住む田舎の町の音楽シーンに対してである。 今日店に並ぶはずのアジカンとやくしまるえつこ…

土下座からの宙返り

彼は、Zepp OSAKAであるサカナクションのライブに参加するために、めんまるさんと共に電車に揺られている。 13時ごろに友人Kとなんばで待ち合わせをしていたのだが、このままではなんばに到着するのは14時になってしまう。 きちんと時間を調べていなかった…

夕焼けと憶測

今日の彼は、来週の試験に向けて生命保険の勉強を少ししたり、祖父母の家でご飯をたべたりしてゆっくり過ごした。 そして夕方になると一人原付きにてめんまるさんの家に向かう。 途中、海沿いで夕日を見てゆっくりと。 景色だけが取り柄の彼の故郷。 それを…

Da me libre

定時の17:00を大きくまわり、18:15を過ぎた辺り。取り立てて今日やらなくてはならない仕事もなくなったので、帰る準備を着々と進めていた彼に上司が尋ねた。 「お前、そうやって帰る準備して、俺が帰れて言うん待ってんのか。」 彼は、臆せず本音で答えた。 …

海沿いと五月

「ほら、仕事とプライベートって別じゃない?」 すれ違った二人組の女性が言っていた。 当たり前である。 当たり前のはず、なのだ。 しかし彼は昨日、休日にも関わらず勤め先の“体育系イベント”に参加させられていた。 せっかくめんまるさんとも休みが重なっ…

さようなら、Estudiantes

9時過ぎに目を覚ました彼らは、昨日の夜遅くまでスーパーファミコンに興じてしまったことを反省しながら、鞍馬山のせいで軋む身体を伸ばしてもそもそと動きはじめた。 朝食をとり、帰る準備をし、友人Kの両親にもお礼の挨拶を済ませてなんとか午前中の内に…

フラッシュバック学生時代

7時に目を覚ました彼と友人Kは、前夜遅くまで意味の無いこと(“ゴリラ哲学”についてなど)ばかり語り合ってしまったことを反省しながら朝食をとり、9時過ぎに家を出た。 本日彼らが向かうは鞍馬山。 彼らが鞍馬山に登るのは、特に鞍馬に行きたいからだと…

Actividad sin significa

昼前に、彼は三条のMinaで大学時代の友人と落ち合った。 彼らは協議の結果三条通のSACRAビル地下にあるエナブランカッというカフェでパスタとタルトのセットを食べた。 店内はほぼ女性客で大変賑わっていたが、働き初めて疲れ切った彼と、就活に疲れ切って引…

河原町

先輩の家を午前9時過ぎに出て阪急電車に乗った彼は、約30分後には河原町に着いていた。 ほんの一ヶ月ほど前まで当たり前のように“ホーム”だった河原町が、当たり前だが見事に“アウェイ”に。なっている。 もう京都に彼の帰る場所はないのだ。 しかし、それで…

ぶらり。

うららかな陽射しの降り注ぐ5月初日の昼下がり。 彼は微熱の体を引っ張ってバスに乗り、駅を目指した。 彼にとっての休日は、家でごろごろ過ごして体を休めることではなく、どこかに出かけて外の世界に触れることなのだ。 たとえ風邪をひいている時であろう…

月末の罵声

怒涛のような一日が過ぎた。 初めての月末。 そして連休前。 ATMには長蛇の列。 本気の昼休み10分命令。 初めて目の当たりにした融資先の破産。 もうてんやわんやである。 ただでさえ風邪を薬で押さえ込み、点鼻薬の力を借りて働く彼は既に満身創痍。 そんな…

ポツリ

雨が降った。 ポツリ。 ポツリと地面を濡らした。 ポツリ。 しずくが落ちた。 ポツリ。 彼の鼻から。 ポツリ。 書類を濡らした。 よりによって、女性の先輩と、仕事のやり取りをしているときに。 とめどない鼻水。 ポツリとも落ちれば、タラリとも垂れる。 …

フラッシュバック

彼はこの土日を、社会人になって以来のまったりさで過ごしている。 まず、土曜の夕方にめんまるさんの家に行き、そこからめんまるさんの姉夫婦の家に行っていきなり芋焼酎をいただく。 そして少しふらふらしながら、もう一人の姉夫婦を訪ねて焼肉へ。 たらふ…

恵みの雨

雨の日は客が少ない。当然、仕事量も少し減る。 知らない仕事がこないので、彼もいつもより楽である。 すると彼が精神的に楽になり、ミスも少なくなる。 したがって、怒られる回数が減る。 午前中、彼は一度も怒られなかった。 初めての経験である。 しかし…

へろへろ面談へらへら

今週の彼は、毎日06:30に起きて、へろへろになって帰ってきては24:00に就寝する生活が定着しつつある。 ところで、銀行というところは、何年勤めても、上司との面談が半期に一度くらいあるらしい。 だいたい、今年の目標など事前に提出した用紙を元に話をす…

Re:

疲弊困憊初業務

研修を終えて初めての支店業務を終えて、彼はふらふらに疲弊している。 覚えることが多過ぎて、頭がパンクしそうである。 そもそも彼は、午前中だけで、すでに一日の全ての体力を使い果たしたと思うほど疲れていたのだ。 それを感じさせるのが、このミスであ…

研修明け

研修が明け、明日から支店の勤務が始まる。 毎日06:30に起きるためには、規則正しい生活、すなわち遅くとも24:30には眠ることを心掛けなければならない。 ところが彼は、理不尽な憂鬱さに押し潰されそうになって、25:00を過ぎてもなかなか眠れずにいた。 こ…

解放から、間髪入れぬ精神拘束。

本日をもって、監獄のような研修が終わった。 本来ならばうきうきした心持ちでスキップでもして帰りたいところだが、研修最後の内容が、彼の心をどん底に落とし込んだ。 次々と襲い来る資格試験、競争社会意識の徹底、進退に直結する人事評定…土日も、自己啓…

合宿研修1〜2日目

17:30ごろに研修を終えると、支店前で待ち受けていたバスに乗せられ、宿泊予定の宿へ。 その宿は入り組んだ海岸沿いの高いところにあり、携帯電話の電波もほとんど入らなければ、3km四方にコンビニも何もない、まさに陸の孤島といえる場所にある。 唯一の救…